「ロードバイクなら100キロ余裕で走れる」
このような都市伝説がカジュアルに語られているようですが、初心者はその言葉をそのまま信じてはいけない。
確かに走れる。可能という意味では。だって地続きだし。
余裕というのはママチャリに比べて、という話。
あとロードバイクに慣れた人なら、200、300走れる人にとっては余裕という意味なんだよ。ここ大事テストに出る。
で、私はというとタイトルのとおり納車次の日に140キロ走りました。
当初は都内から榎本牧場ゴール往復80キロ予定だった
今、計画を見直してみると、荒川サイクリングロード沿いにある、榎本牧場で折り返しの80キロコースの予定だったね。
ほんまどういうことやオイ。
ラインのログを見ても前日はロードバイク買いたてウキウキウォッチングだし、あの時の自分に「この後、地獄をみるんだよ」と教えてあげたい。
というか80キロでも初心者にしては長距離では?
だいたい、初心者の場合は30、50、70…と徐々に距離を伸ばし、100キロは2、3ヶ月かけて指す目標値らしい(というのを最近知った)。
「あの頃の僕はどうかしてた」
って君は今でもどうかしてるよ。
で、前日はというと「初心者やし、乗り方とかググって勉強しとくか^^」という感じで、ロードバイクの乗り方、みたいなyoutubeの動画を2本見ただけでした。まあ他にできることもないし。
シティサイクルと違ってフロントのギアが2枚ある意味とか分かってないし、サドルの腰掛け方もケイデンスも知らない。
これが後にとんでもない負荷になるだなんて想像もしていなかった。
午前8時都内スタート〜20km地点で尻が壊れる
「ロングライドは軽いギアで走ってください。あと小腹がすいたら小まめに補給して」
「は〜い(軽いギアにしたらいっぱい漕がないとダメじゃない?めんどくさwwしっかり漕ぐわ〜)」←死亡フラグ
初心者らしく、ママチャリ漕ぎでガシガシペダルを回す私。
その割に速度は20kmちょいとそんなに出ず、K氏にすぐに引き離される。必死でついていこうとさらにガシガシペダルを踏む私…。
あれ〜ロードバイクって思ったより速くないぞ、速いけど。でもミニベロのK氏に追いつけないぞ〜〜〜。ともがいているうちに、疲労がどんどんと溜まっていく。
どれくらい疲れたら休憩すればよいのかもよく分からなかったが、そんな心配も束の間。
「なんか…尻が……めっちゃ痛い!!!!実は最初の方からジワジワ痛かったけど、尻が4つになりそうなくらい痛い!!」
というわけで、休憩に入り尻を休める。
「うーん、サドルですかね。尻が痛い人は相性がいいサドルを見つけるまで延々とサドルを買い続ける"サドル沼"にはまるらしいですが」
ロード本体と装備ですでに25万以上飛んでいるというのに、いきなりサドル買い替えだと…?本当にロードバイクは貴族の遊びだよ。貴族の遊びなのに庶民が手をだしてしまった罰がこれか。
けど今、「このサドルにすれば尻の痛みは無くなります」と言われたら数万くらい積んでしまいそうだ。それくらい尻が痛い。
とはいえ、ここでリタイアする訳にもいかないので、尻を休めて何とか走ることに。
埼玉の中に北海道がある
荒川をどんどん北上すると、めちゃくちゃ広大な平野がひろがっていく。
これが社会科の教科書にでてた「関東平野」か。四国生まれの私からすると、こんな広大な土地を見たことがない。
噂に聞く北海道もきっとこんなのに違いない。埼玉に行って北海道が楽しめるなんてコスパいい。
広大な土地で尻の痛みを抱えながらロードバイクをひたすら走らせ、K氏に追いついたら置いていかれたりを繰り返していると、どこかから聞いたことのない音がした気がした。
ポキ…
心www折れたwww
そして急に足の力が抜けて速度がどんどん落ちていく。
すごい、心が折れると走れなくなるって本当なんだ。弱ペダ今泉くんに今自分がなってる!と心折りながら感動した。
そして、巻島センパイの
「限界まで回すしかないショ!」
を思い出し、ペダルを踏んだ。というか踏むしかなかった。周り何にもないし。全然進まないけど。
くる…くる…くるくる…(ひめぇ…)。
cafe VIAで癒しタイム
カジュアルに心を折りながらも、なんとかローディーが集まる古民家風カフェVIAに到着。
サイクルラックに吸い寄せられるー。ここで一気にHPもMPも回復〜。
ネイチャーきれいだし♡
ローディー歓迎ムードだし♡
アニマルもかわいいし♡
ケーキもおいしいし♡
馬ー♡
ロードバイクでこんなところに来れるなんて、ちょっと感動…ロードバイクって楽しい!
尻は5つに割れてるけどまた来たい〜。回復する〜。
ローディーの聖地、榎本牧場到着
5キロほど走り、本日のゴール(のはずだった)榎本牧場に到着。
「聖地に初日ライドでこれちゃった」喜びと達成感でいっぱいになる。
さぁ、名物のソフトクリームだ!
ラムレーズン、うまー。
牧場の豚や生まれたての子牛を鑑賞〜。楽しい、これは楽しいぞ!
車や電車で来るよりも達成感がはるかに高い!
ウォーキングで来ている地元のおじいさまに「東京からきたんか!すごいな」と褒められて誇らしい。
そうだよ、自転車で、自分の足できたんだよ!!
高半で盛り盛り丼ランチ
続いてランチはローディーにも人気の高半。ここもサイクルラックがあり、ローディーはじめ地元の人がすでに人が溢れかえっている。
注文待ちの間、疲れで座ったまま爆睡する私。
盛り盛りの 海鮮丼きたー♡
K氏は天丼。でかい。
「結構走れてるのでこのまま荒川サイクリングロードの果てまでいってみましょう」
「うん!(ご飯美味しいモグモグ)」←
飯で気を取り直した私、またも死亡フラグをたてる。
埼玉北上、馬糞峠という新たな関門
荒川 サイクリングロードに戻り、ひたすら埼玉を北上する2人。私の尻はすでに6つに割れているが、痛みに慣れてきた。
今冷静に考えると、身体が出した危険信号を無視し続けたせいで「こいつだめやわ」と脳が諦めて、痛みを感じさせない別のホルモン出してたのかなとも思う。
どんどん不穏な感じの景色になっていく。ここは本当に日本かな?ハリーポッターかな?
森というか林というか、禁猟区になっている地域を通り抜け、再び荒川らしい広大な平野に出た時である。
「な、なんか…臭い!」
風下にある牧場から、新鮮な家畜の糞尿のかほりが調達されてくる。しかも、それが2キロほど続く。
思いもよらぬ刺客「荒川馬糞峠」。
有酸素運動のロードバイクにこれは非常にきつい。坂道以外にも峠は存在することを知る。
ちなみに荒川は向かい風でも有名で、向かい風がきつい日のことを「大荒川峠」と呼ぶらしい。この話はまた後日。
荒川サイクリングロードの果てへ
果てとはいえ何もないし、GoogleMAP上の果てなので本当はもっと道が続いていたが、何となく記念撮影。
スタートから70キロ地点。
ふぅ…
ここから帰るのかwwwww
テンションあがるぅ…。
既に尻は8つに割れているし、尻の痛みをカバーしようとして膝も痛くなっていた。
ペダルを回すたびにピキピキとやばい感じの痛みが右膝に走る。最初にガシガシとペダルを踏んでいたツケが一気にここでやってくる。
「ううっ、膝が痛いよK氏」
「膝はやばいですね…」
「ど、どうすれば(ヘルプを求める視線を送る)」
「そうだなぁ…僕、尻とか膝とか痛くなったことないんで分かんないすねwwww」
「!?」
やはりまわすしかないショ…
我慢してロードバイクという名の三角木馬にまたがる。
この時点で15時、暗くなると別の意味でやばくなりそうというのは素人の自分でも分かる。
ここからは本当に限界を突破するしかないショな限界ギリギリライドなので写真はもうない。
帰りはK氏に大半引いてもらい、ほぼ「無」の境地で走る。心を折っている暇もない。
いよいよ心身ともに本当にやばくなったのでマクドナルドで休憩(108キロ地点)。
100キロを突破したのは地味に嬉しかったが、喜びを噛みしめるのは後だ後!
インナーギアに切り替えて、悟りの境地で走り抜く。
日は完全に落ち、街灯もなにもない荒川は真っ暗。怖い、道が見えないとこんなに怖いのか!
あんなに昼間はウジャウジャいたローディーも1人もいないし、一般人の姿ももちろん見えない。
世界は滅んだのかもしれない…。多分滅んでるのは自分の肉体だけど。
2人で並走してライトをマックスに照らして荒川サイクリングロードを走り終える。
公道に入ってからは、もはや緩い坂も登れなくなり、体感時間で3時間くらい(ふつうに走ると30分)の帰路を走りぬいてなんとか無事帰宅。
こうして初ロードバイクの140キロを終えたのでした。
尻は10個に割れていて、2つに戻るまでに1週間かかった。
正直なところ、めちゃくちゃしんどいけど、めちゃくちゃ面白かった(無事?帰れたからだけど)。今でも話のネタになるし。けど、他人には勧められない…。
あと、最初に長距離走っておくと自信になるのがいいところ。
このあとの70キロ、80キロのライドがへぼく見えてくる。
そうか。こうして「100キロ余裕」と嘘付くローディーモンスターが出来上がるのか…と妙に納得してしまった一件になった。
ちなみに今でも100キロ走るとちゃんとしんどいから。この時よりはるかに走れるけど。
走行距離140キロ
ライド時間 約12時間