おっす、おら産まれたての子鹿。初ブルベに挑戦して200km走ってきたよ。この半年、たいして走ってなかったおかげで脚ガクガクだぞ。
そんなわけで、久々の過酷ライド記録だよ。
「ブルベ中の記憶ない」とかいいながらすごく長いレポートになったので暇な人は読んでおくれよな!なお写真撮る余裕がほぼなかったので写真は少なめだよ!
ブルベとは超ロングライドの自転車イベントのこと
ブルベは、長距離を制限時間内に走る一般ボランティアが開催する自転車競技のこと。
コースは事前に決まっていて、途中のチェックポイントを通過しながら進む、言わばウォークラリーの自転車版といったところかな。
距離と制限時間は
200km(13.5時間)
300km(20時間)
400km(27時間)
600km(40時間)
1000km(75時間)
とあって、休憩や睡眠時間も含めて時間内に走破しなければならない。
一年以内に200〜600kmそれぞれ全部達成するとSR(シュペール・ランドヌール)という、めっちゃすごい自転車乗り!の称号がもらえ、さらに条件を重ねると1200kmのPBP(パリ、ブレスト、パリ)というパリ〜ブレストを往復する世界最古の超長距離イベントに出る参加権が得られるらしい。
つまり、ダンジョンをクリアしながらメダルを獲得してレベルの高いダンジョンのクリアを目指すリアルRPGみたいな自転車の競技である。
スポーツ自転車に乗らないような一般的な感覚からすると、その距離やハードさから「おかしいんじゃないの?」と思うかもしれないが、普通にスポーツ自転車乗り視点から見ても凄まじい距離を走ると思う。それがブルベである。
けど、こういうアウトドア系の趣味というのは次第にエクストリームな方向に向かっていくものなので、ロードバイク に乗り始めて一年経ち、特に目指すものがなくなってしまった今、手をつけるタイミング的にはちょうどよかった気もする。
なお、たいして練習もしなかったので雨や機材トラブルが発生したら即リタイアする気満々でいた。
公共のイベントではないので、家を出てからお帰るまでがすべて自己責任。安全に帰宅することが第一なのでリタイア(DNF)の選択も大事な判断のひとつとなる。
このやや冒険めいたところがブルベの特徴でもある。
ブルベ当日:逗子受付〜スタートまで
前日寒波のため朝の気温1度。
ぼっち力が高いので寒い中1人での初参加となった。
自宅茅ヶ崎、スタート地点は逗子の15kmほどだが、寒いので輪行で行くというヘタレっぷりをいきなり発揮。
集合場所の神社に行くと100名近くのライダーがいる。みんなの反射ベストがまぶしい。
どんなピリピリした空気なのかと思っていたが、意外にもゆるい。
富士ヒルの時はもっとキリキリしてたように思うが、知り合い同士が多いのか「和気藹々」といった雰囲気だ。
そんな中1人で緊張していると、キャンプでお世話になったSRのT橋さん、運営会長のT中さんがいたので声を掛ける。
T中さん「お、初ブルベだね!これは難易度1だから大丈夫だよ。完走率も高いし」
若干プレッシャーも感じたが、知っている人と話せて緊張がほぐれる。
T橋さん「折り返し地点から少し行けば吉野家があるから、お昼そこで食べたら身体温まるよ」
いつも超絶優しいT橋さん、菩薩かな。後光が差して見えるよ(ちょうど日の出だし)。
T橋さん「受付済んだら、あとは食べる、走る、それだけだよ!」ピカー(朝日)
そうやそうや。何でもブルベで走れなくなるのは大体エネルギー切れらしい。食べられる間は走れるはずよ。
車体のチェックを受けて慌ただしくGPSセットして、あれよあれよという間にスタートを切る。
ちなみにブルベのベストは普通にAmazonで買いました。
逗子〜PC150km地点:走り慣れた道R134号
左手は朝日に染まる海岸線、正面に時々現れる富士山。R134は何度走っても飽きない道なんだよねー。
途中、後発から何人かに抜かれる。みんなビュンビュン飛ばして行く。興奮していて少し空気に飲まれていたかもしれない。
自分にしては前半ハイペースだったが、これが後々とんでもなく負担になって襲ってくることをこの時はまだ知らない。
それはそうと、手足が寒い。というか冷たすぎて痛い。足の感覚が既にない。太陽はよ。
同じペースの人いない問題
「同じくらいのペースの人がいればいっしょに走るといいよ」
事前にそうアドバイスを受けていたが、同じペースの人、いない。
抜いていった人はめっちゃ速いし、後続も見当たらない。
…まあ、ブルベは基本1人で何とかするルールだし、いいや。そんなものそんなもの。
と思いつつも1人は心細い。
遠足の日にランドセルではなくリュックサックを背負って学校に向かうものの、同級生に誰も合わなくて「あれ、今日本当に遠足だよね?」と思う不安のアレに似ている。
あのスタート地点の出来事は幻だったのか…。
PC1:50km地点 西湘コンビニ到着
などと考えているうちにPC1到着。ブルベライダーがワラワラいた。幻ではなかったので残り150kmはやはり走らないといけない。
さて、ここでがっつり補給や!あとトイレ!とコンビニに駆け込むと思わぬ事態が!
ぎゃー!トイレ並んでる!
減っていく補給の時間。焦る自分。
トイレを済ませてパスタを買っているとしんがり隊が到着していた。
T中会長「ゆっくりしてたらダメだよ!」
ヒェー、と慌ててパスタを食い、再出発の準備をする。ここで糖分補給をすればよかったが、なんせ時間がなかった。
うーん、休憩もシビア。これまでのライドでこんなに休憩しない経験は初めてだ。
50〜100km熱海・伊豆のアップダウンコースで一気に消耗
コンビニを出る前に、女性SRのHさんに「あの人たち優しいから付いていくといいよ」とグループを教えてもらうも、付いていこうとしても一瞬で千切られてしまうww
無理しても死期が早くなるだけだ。マイペースを意識しよう…。
GPSがおかしい
それはそうと、新しく導入したwahooのサイコン表示が所々おかしい。
ナビというナビは特になく、地図からも大幅にずれるときがある。誤差かな?
いやこれはまさか…コース復路を表示しているのでは…。
そう思いつつも大まかに道は分かるし、まあ一旦このままでいこう…。
と思っていたら2回ほど道を間違えてタイムロス。
あとで分かったが、やはり復路を入れていた。正常に表示していればポイントごとに案内が出るはずだったので、前半は特に何も案内をしない地図を眺めていたことになる。
エネルギーが足りなくて意識混濁
75km目くらいから、疲れがドッと襲ってくる。
肩と腕と首がだるい。体幹が終わった証拠だ。
そうすると膝に来るのが自分の傾向だが、スガさんから受けた講習内容を思い出しつつフォームを変えながら膝にかかる力を逃す。膝だけは死守しないといけない。
…視野が狭くなってきた気がする。糖分が足りてない。
そうこうしてるうちに熱海の海岸線沿いの長〜い登りと長ーい下りがやってくる。
つら…。
長ーい下りからはキラキラと輝く太平洋が一望できて絶景のはずだが、私の頭の中は感動よりも先に
「帰りはこれを登るのか…」
という軽い絶望が先に来てしまう。
なぜ温泉地でこんな苦しいことをしているのだろうか。おんせんはいりたい。
↑唯一撮った熱海の海。撮影ポイントを選ぶ余裕がなかったので普通の路上から。
それでも景色が良いというのは苦しいライドで救いになる。なんの変哲のない景色だと精神が先にやられてしまう。
すでに折り返しに入ったライダーとも数人すれ違う。速すぎる、バケモノか。
「おれ、この戦いが終わったらブロンプトンで熱海の温泉に入りにいくんだ…母も連れて。」
川奈のクソ坂、許せない
熱海の坂はまだ序の口だった。
意識朦朧としながらペダルを回し続け、折り返し近くの10kmに入った途端、斜度10%近くの坂が連なる峠道が出現。
Ks坂ーーーー!
キコは激怒した。かの乳酸生成を活性化させるks坂を除かねばならぬと決意した。キコは地理がわからぬ。キコは平坦民の生まれである。スプラトゥーンをし、犬と遊んで暮らして来た。けれども、ks坂については人一倍敏感であった。
生まれ変わったら坂のくぼみを埋める平坦職人になるというかつての決意をあらたにする。
それ以外の大半の時間は意識不明で、無の世界にいた。
昼飯、昼飯を早く食いたい。その希望のみを抱いて坂に耐えた。
そしてようやくPC2のスーパーに到着。
死ぬほど疲れた。天に召されてしまいそうだ。
PC2:100km地点のスーパー、炭水化物売り切れ
昼飯をモチベに走って来たが、到着が遅いせいでオニギリも弁当も売り切れ。
パンはあるが、ちがうそうじゃない。飯っぽいものが食べたい。ご飯が食べたいのよわたし!
本当に泣きたかった。DNFしそうになった。食べないともう走れない。
と、ここで別のライダーがカップ麺にお湯を注いでいるのを目撃する。そうだカップ麺でしのごう!
カップ麺大とどら焼き大を買い、近くの神社で貪り食う。
カップ麺を食いながら、復路のコンビニでもう一度飯を買おうと決意する。
100〜150km復路 疲れすぎて記憶喪失
往路は来た道の坂の登り返しコースだが、まじで全く記憶がない。
完全に無だった。
あれ信号全部青だったかな?ってくらい止まった記憶もない。
脳がやばさを感じて無に切り替えたのかもしれない。
途中、コンビニに寄ってオニギリとプリンを買う。これまで生きてきた中で1番うまいプリンだった…。
復路は交通量の多い真鶴街道を避けたコースだが、クルマが少ないのは良いが、ここも坂道。ギアが足りない。蓄積された乳酸のせいで瞬時にギアが売り切れる。
AJ会長、SRのHさんなどスタッフさん達と途中で一旦合流するも、やはりあっという間に千切られるw 後ろから来た女性ライダー達がお喋りをしながら楽しそうに登っている。
みんな元気だ…私は滅びそうだよ…。滅びの日は近い。
顔以外の身体全てが痛い。
GPS、サイコンの電池死亡
と、ここで、wahooのGPSが突然眠り始めた。
「ばかっ!ここで眠ると死ぬぞ(私が)」
何かセッティングの問題かと思いいじり倒してみるが、何度起動しても眠りに入ってしまう。
必要最低限の機能に特化したwahooは何の告知もなく、本来の機能を発揮し切ることなく(私のせいで)永遠の眠りに入ってしまった。
…帰路はなんとなく道わかるからいいけど…。
と、しばらくしてガーミンも
「お腹減ったし眠い」
とバッテリー不足によるスリープアラートを発し始める。
「ガーミンよ、お前もか…。いいよ、お眠り…あとは私がなんとかする(しかない)から」
そしてガーミンは深い眠りについた(170kmまではスリープモードで記録されていた)。
13時間はもつだろうと思っていたサイコン、両者死亡。充電の準備はない。サイコン頼りだったのでコマ図ももちろん作っていない。キューシートはあるけど、そんなん見てる余裕なんてもちろんない。
腕の心拍計だけが動いている。
以降文明の機器によるサポートなしで走ることになる。
我の唯一の相棒たちが…いよいよ孤独だ。
だいたい道は分かると言いながら2回ほど分岐点を間違えて戻る。この疲労でこのミスは本当にきつい。
PC3 150km〜ラスト
↑PC3の証明となる駅の写真。
日が落ちてきて寒くなってきた。
行きの足の冷たさから帰りもきっと足は冷たい。コンビニの袋を足に突っ込み突貫の防寒対策をする。まさかこれをやる日が来るとは思わなかったが、効果は抜群だ。
↑帰って靴を脱いだ時の写真。
小田原に入ったあたりから、知っている道に入り、いよいよゴール間近の終盤に。完走できそうだ。
人間とは不思議なもので、そんな精神状態が影響してか、そこから急にふっと体が軽くなる。
R134号、残り30km地点で仲間の温もりを知る
平塚に入り日常的に走っている道にたどりついた。
と、ここでようやく同じペースの男性がつかまる。
信号に止まるたびに
「疲れましたね」と会話をする。
あったけぇ…人間との交流、あったけぇよ…。
茅ヶ崎に入り、ある意味最大の難所である「自宅峠」を迎えた。
キコ「わたし、家が茅ヶ崎なんですよね、クポゥ(寒くて普通に笑えない」
男性「ほんと?僕、藤沢w」
キコ「www」
こうして2人で自宅峠を無事乗り切る。1人だとそのまま自宅方面に吸い込まれていたかもしれない。危なかった。
逗子200kmゴール・認定
ほぼ一人で走り、一人仲間ができ、最後は10人近くのライダー集団となる様は、さながら総力戦のようだった。
人が増えただけで、総力戦並みの感動が得られてしまうとは。
目の前にでっかいスクリーンが広がり、味方全員でフィナーレに向かう。
…そんな妄想が見えるほど疲れ、そして一人で勝手に感動していた。こ、これがブルベの醍醐味か!
心身の限界を迎え、感動の敷居は限りなく低くなっている。
街の明かりも、人々の姿も、賑わいも、何もかもがうれしかった。
ゴール地点のマクドナルドに到着
最後のPCとなるマクドナルド前広場で、前を走っていた女性ライダー達に元気よく声をかけてるいる女性がいる。
「初ブルベ完走おめでとう〜」
この女性たちも初完走だったのか、よかった。賑わう声で「ああ日常に戻ってきたんだ」と思った。そしてもう走らなくて済む…。
男性「こっちの方も初完走だよ!ようこそ!変態の世界へ!!」
わい「!!?」
すかさず一緒に走ってくれた男性が声をあげる。そして続いて周りのみんなから祝福の声があがる。
「ほんとですか!おめでとうございます!!」
「おめでとうー」
「おめでとう!」
その時の私のスクリーン。感動のフィナーレ↓
「あ、もしかしてキコさんですか?私、虫です!」
自分のことのように喜んでくれる目の前の女性は、なんと私がブルベに興味を持ったきっかけでもあるブログ「坂はクソ!!!!」のブログ主、虫さんであった。
ロードに乗り始めてあまりにも坂が登れなかった時、「坂はクソ」と言いながらもブルベでいくつも峠を越えていく女性がいると知り、頑張るきっかけになった。坂が得意でなくてもロードに乗ってていいんだ!と思った。
このブログがなければ、ブルベに出ようとも思わず、ヒルクライムも幾度かで諦めて、ロードで走ることすらも辞めていたかもしれない。
あまり話せなかったが、 最後のPCとなるマクドナルドで買い物を済ませ、震える足を持ち上げながら二階に上がり認定を済ませる。
そして、Hさんにすすめられるがままにブルベを日本に持ち込み、浸透させてきたという伝説の女性、井出マヤさんと一緒に写真を撮った。
マヤさんは女性のブルベライダーを増やす活動にも励んでいらして、私の初参加とともに初完走を特に喜んでくれた。
「あなた、走れそうな身体つきしてるわね!」
実際はまったく走れないだけに少し恥ずかしくもあるが、マヤさんに言われると「こんな自分でももっと走れるようになるかも?もっと走れるようになりたいな」という希望とやる気が不思議と湧いてくる。
AJ会長とも雑談を交わし「フレッシュ出たら?」などとまた更なる頭のおかしなイベントに勧誘される。
そしてニヤニヤしながら完走報告しているところを隠し撮りされる。
さて、メダルももらったし帰宅するか(輪行で)、と階段を降りるところで、ふと足を止めた。虫さんともっと話しておきたい!
いや、お友達と話してるし、またの機会があればでいいかな…、と階段を再び降りたが、いやいやいや!今年はやりたいことは全部やると決めたではないか。やりたいことをやれたならその感謝の気持ちを伝えずにどうするのか!
人見知り癖を振り切って再び戻り、虫さんに感謝の気持ちを伝える。
虫さんはとても明るくて気さくで、「ブルベが楽しいのは、ここにいる仲間のおかげです」と、とても謙虚な方で、次は定峰200がオススメだと教えてくれた。
走っている時は「もう2度とやらない」「200以上とか絶対無理」と思っていたのに、ゴールして色んな人達と話していると
「あー楽しかったなぁ、また出たいなぁ」なんて思い始めてしまう。ブルベ、不思議だ。
ブルベの人達は、とても親切で優しい。
勝ち負けがない世界だからなのか、エクストリーム長距離を走るような人々は細かいことは気にしなくなるのか、徳の高い人が多かった。(なお収入層も高めである)
そんなこんなで、初ブルベはたくさんの課題を残しつつもとても良い経験となった。
次の日はまともに歩けず、 初めてロードに乗って140km走った時以上の筋肉痛に襲われたが、富士ヒルの時のような燃え尽き感もなく、もっと走りこまねば!とロードに対する意欲も高まったのであった。
ブルベの名著↓